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2006年7月24日 (月)

グレンリベット Glenlivet

これは地名、蒸留所名そしてウイスキーのブランド名である。このゲール語の地名は複数の解釈があるが、例によってモルトウイスキー大全は、ゲール語のつづりをあげずに一つの説の説明しかしていない。また、グランタウン博物館発行の Gaelic meanings of Strathspey names という小冊子には、ゲール語では意味がわからないとも書いてある点に注意したい。

解釈例
1)ゲール語で、静かなる谷 モルトウイスキー大全にはつづりなし 
                                       PeatFreakでは Gleann Liobhait グレン リーヴァト
2)ゲール語で、スムーズに流れる川の谷  ゲール語のつづりは明示されていない
3)ゲール語以前のケルト系言語で、水に満ちた川の谷
4)ゲール語で、輝く川の谷     Gleann Libheit グレン リーヴェト

1)の解釈は、正直言えばよく見る解釈である。モルトウイスキー大全にはつづりがないため、どのような解釈をしたのかよくわからない。ここでは、同じような解釈をしていた PeatFreak のつづりを元に検討してみる。ゲール語でのつづりは Gleann Liobhait があげられており、Liobh が smooth で ait が場所で、Glen of Smooth Place → 静かな谷 という解釈であろう。
 しかし、元々 Livet は川についた名前なのに、ait という場所を示す語尾がついているのは違和感がある。
 また、liobh という単語は辞書サイトなどでは見つけられず、liomh というつづりなら smooth という意味があった。これでも発音は変わらない(下記辞書サイト参照)。

2)の解釈は蒸留所の公式サイトのモノである。ただし、つづりはあげられていないため、どんな言語のどんな単語を当てたのか不明である。

3)の解釈はスコットランドの地名に関して結構有名な学者の本にでていたものである。
 この解釈のアプローチは面白かった。大きな川がある場所には、人々が早くから住み着きやすい。また大きな川の大きな支流の流域も同様に早くから人々が住み着き、細い支流あるいは奥地にある支流の流域にはあとから人々が住み着くか、発見そのものが遅れる。そのため、大きな川そのものや大きな川の大きな支流には、古くから名前がついていて、後からやってきた人々はそれを引き継ぐ傾向にある。しかし、細い支流や奥地にある支流には、あとからやってきた人々が名前をつけることもある。これを、スペイ川の大きな支流のエイヴォン川、さらにそのエイヴォン川の支流にあたるリヴェット川、さらにそれらの細い支流の名前をあげて説明してあった。
 スペイ川の大きな支流であるエイヴォン川がゲール語ではなく、ブリソニック系なのはゲール語を話すゲール族もしくはスコット族より早くから別のケルト系の民がいたことを示している。リベット川は同様に古いのであって、ゲール語以前のケルト系言語に由来するのではないかとしているのである。もちろん、エイヴォン川の他の細い支流には、ゲール語の名前、英語の名前などがあって、新しくつけられた名前であることもわかる。さらに、リヴェット川の細い支流としてリトルリヴェット川なんてのもあって、英語の時代になってつけられた名前とわかる。
 その上で、Livet川についてはゲール語以前のケルト系言語由来とし、Full of Water や Flooding という意味をあてている。”水が満ちた”あるは”洪水を起こしている”というような意味である。しかし、その根拠となったつづりはあげていない(つづりをあげられてもブリソニック系言語ではわたしにはわからないが・・・)。

4)の解釈も同様に、スコットランドの地名について本を書いている学者の説である。
 3)の本は、ゲール語の他にも種々の言語からの地名を研究しているのに対して、4)の本の著者は主にケルト系言語の地名を研究しているとのこと。
面白かったのは、アイルランドやスコットランドを含めて多くの地域では、母音で終わる単語の最後にあまり意味がないと思われる”d”を付け足して地名や川の名前にしていることが多いというアイルランドの学者が見つけた”法則”を紹介していたこと。これは、ギリシア語やラテン語では、-ant, -ent, -ont などが母音で終わる単語にくっついて地名を表すのに似ているという説明もあった。また、-entia -entio などで終わることで説明ができるスコットランドの地名などの例もあげてある。

話が長くなったがこれを書いておかないと、グレンリベットが説明できないので、ご容赦いただきたい。
 Livet は liv が元になっていて、それに-entia がついた Liv-entia が、元々ついた名前ではないかというのだ。それが、ゲール語で Libheit になったのではないかと。-entia は地名につく単なる接尾辞だとして、Liv はどんな意味があるかというと、ゲール語では li(輝き)、ウェールズ語ではlliw(色)という意味からきている、”輝き”や”ぴかぴか光るもの”としている。それ故、女神の名前であることに疑問がないとまで言っている(ゲール語でli、ウェールズ語でlliw からきているってことは、li より lliw ほうが liv に近いって気がするので、やはりブリソニック系言語に由来するのだろうか?この点では3)の解釈とも近いような気がするが)。

ということで、どれが正しいかはわからなかったが、”静かなる谷”は、少なくとも地名を研究している学者達の眼中にない解釈だというのがわかっていただけただろう。

# だんだん、ディープにはまっていく自分を感じる今日この頃。

原出典は以下の通り
1)静かなる谷
  土屋守:改訂版 モルトウイスキー大全(小学館)2002年 P124-125.

1の続き)"Glen of the Smooth Place"
  Glen (Anglicised Scottish Gaelic word for gleann, river valley in mountain or hill country) liobh (Scottish Gaelic - slippery/smooth) ait (Scottish Gaelic - place).
  http://www.peatfreak.com/art-distillery-names-pronunciation.php

2)River Livet は Smooth-flowing One
  蒸留所公式サイト( http://www.glenlivet.com/ )から必要箇所を抜粋
  In time, the glen as we know today took shape. Only the icy waters of the River Livet - or "Smooth-flowing One" - softened its break contours. Nature had created the perfect environment for producing whisky.

3)River Livet は Full of Water もしくは Flooding (極初期のゲール語もしくはゲール語以前のケルト系言語)
  W.F.H. Nicolaisen 著: Scottish Place-Names New Editon  2001年 P223-224.

4)Livet は 輝くもので女神に由来する → 輝く川
  William J. Watson 著: Scottish Place-Name Papers 2002年 P125.

参考)スコットランド議会サイトは、つづりがあげてあるだけで意味が書いていない
  Glenlivet (Banff), Gleann Liobhait.
  "The glen of the Livet".

辞書サイト 
  http://www.ceantar.org/Dicts/search.html
1)liomh  polish, smooth

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コメント

こんばんわ
またまたTBいただきましたm(__)m
良いのか悪いのか最近は『モルトウイスキー大全』を
開くことが無くなりました…
始まりはPengo様の「ロングモーン」なんですけどね(^^ゞ

投稿: 活男 | 2006年8月 2日 (水) 19:37

トラックバックありがとうございました。

昨晩は、TB打ったところで力尽きて寝てしまいました~(笑)。

わたしは結構見てますよ~「モルトウイスキー大全」。”日本で知られていること”はたいていこの本の中にありそうだから。

投稿: nanba | 2006年8月 3日 (木) 08:05

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