ストラスアイラ Strathisla
蒸留所の名前解読を続けていく。基本はアルファベット順だったのだが今回はこれにする。もちろん、地名でもあるし、蒸留所名であるし、シングルモルトウイスキーのブランド名である。
解釈例
1)ゲール語で、「アイラ川の流れる広い谷間」 ゲール語のつづりは示されていない。
2)アイラは、ケルト以前の言葉で川につけられた名前、rapid-moving(早い流れ)
つづりは、il もしくは eil。
Strath はゲール語で広い谷。
3)ゲール語だが、ギリシア語「水or飲む」に由来する。piが次にpilaとなって、ケルト語になるときにpが落ちてilaとなった。Strath はゲール語の広い谷。
厳密には、Strath Isla そのものの解釈を見つけてはいない。
モルトウイスキー大全のように「アイラ川が流れる広い谷」というなら、グレンリベットはリベット谷だし、グレンファークラスも緑の谷などと解釈せずにファークラス谷とやればよい。わかりやすいものは、ゲール語から日本語に訳し、手がでないとなると固有名詞に逃げるという首尾一貫していない本である。
2)の解釈は、川の名前、谷の名前としてのIslaについてのものである。
ゲール語以前の言語の il もしくは eil 由来で、rapid-moving という意味であると解釈されている。ただし、厳密にはケルト語以前と確定しているわけではない。現代ゲール語では Ile とつづられ、イーレと発音される。
あとはゲール語の広い谷とくっつければ蒸留所の名前の完成。これには、Strath と Srath の二つのつづりがある(標準化されていない)。発音は、strath ならストゥラー、Srath ならスラーであり(大きな発音の違いではないと感じるけど)、英語のストラスとは異なることに注意されたい。
これで意味は、「早い流れがある広い谷」ということになり、ゲール語風に発音するならストゥラーイーレもしくはスラーイーレということになる。
3)は、2)の解釈にある速い流れというのを否定した上で、「水or飲む」に由来するとしている。「水or飲む」としているのは、わたしの貧弱なギリシア語やラテン語の知識ではよくわからない書き方だったからである。たしかに「水」に由来しているならば、川にも島にも使えそうな名前である。また、具体的に3本の isla 川をあげて、いずれの川も速い流れではないという検証(落差と川の長さを具体的にあげてある)まできちんとしている。
しかしながら、3)の説は最近ではあまり取られていない。というのも、Islay島は人名由来という説が有力になってきたからであり、Isla川とIslay島を共通で考えなくてもよいからであろう。
わたしは、2)の説を一押しにしたい。
原出典は以下の通り
1)アイラ川が流れる広い谷間 ゲール語のつづりなし
土屋守:改訂版 モルトウイスキー大全(小学館)2002年 P228-229.
1の続き)PeatFreakの解釈 1)と同様に Isla の解釈がない
"The Valley of the River Isla" Strath (Scottish Gaelic - broad river valley), Isla is the river that flows here.
http://www.peatfreak.com/art-distillery-names-pronunciation.php
1のさらに続き)
Strathisla (Banff), Srath Ile.
"The strath of the Isla".
http://www.scottish.parliament.uk/vli/language/gaelic/pdfs/placenamesP-Z.pdf
2)David Ross 著 : Scottish Place-Names 2001年 P116.
A river-name whose derivation has been tentatively traced back to pre-Celtic root form il or eil , with the meaning of 'rapid- moving'.(必要なところを抜粋)
3)William J. Watson 著: Scottish Place-Name Papers 2002年 P57.
川の Isla も島の Islay も同じ語源を持つ。
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コメント
おうっ、もしかしてPengoのために順番を変えてくれたのかい。ありがとうございます。
まさに新解釈になっていますね。でも今回は新解釈の方がゲール語っぽいですよね。nanbaさんの例の本批判も最近はコピペしているかのような繰り返しですもんね。
投稿: pengo | 2006年8月14日 (月) 00:59
そうです。昨日は、pengoさんのために一生懸命、ラテン語とギリシア語の意味を調べてました~(笑)。でも、全くの力不足(ため息)。
トラックバックしておきましたよ。
これらの解釈はすでに英国の学者や研究者の間では、とっくに知られていたことなのだと思います。なので、新解釈というよりは、”定番の解釈”だと思います。
日本のウイスキー本が、その情報を得るのをさぼって自分勝手な解釈を日本に普及させてしまったと思っています。
わたしは”新解釈”というより”普通の解釈”というのがいいかと思うぐらいです(笑)。
それと、例の本の著者は地名に関する英語の本は、2冊しか読んでいないと参考文献のリストから判明。しかも、どちらも100ページ以下の薄い本なので、底の浅い調査だったのではないかという疑いはますます濃くなっています。
WatsonやNicolaisenの本はどちらも250ページ以上あります。
投稿: nanba | 2006年8月14日 (月) 08:18
ほっほっ。例の方もnanbaさんの軍門に下る日が刻一刻と近づいてきておりますね(^^♪バサラの9月11日のセミナーは行くの?
投稿: pengo | 2006年8月14日 (月) 15:50
行くことになってます。
セミナーがハイランドパークなのが惜しい感じ(笑)。
投稿: nanba | 2006年8月14日 (月) 16:15