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2008年5月21日 (水)

”ケルトの水脈”

ひさびさに面白い本を読んだ。

  書名:ケルトの水脈 (興亡の世界史)
  著者:原 聖
  価格: 2,415円 (税込)
  単行本: 374ページ
  出版社: 講談社 (2007年7月18日発行)
  ISBN-10: 4062807076
  ISBN-13: 978-4062807074

現代のケルトは古代のケルトとは関係がないなんて記述があって、それでこの本は典型的な日本のケルトの本と違うなぁと思って読み始めた。
初期のドゥルイドは、ピュタゴラス派の流れをくむある種の知的特権階級であったが、それもすぐにすたれ、カエサルの時代には、そのようなドゥルイドの存在はほとんど記述されなくなり、その後に記述されるドゥルイドは、どこの世界にも共通するようなシャーマンであり、ケルトに特有のものではないなんてばっさり書いている。
最近の遺伝子解析の結果をきちんと踏まえて書いているために、ブリテンやアイルランドにどのようにしてケルト系言語がつたわったかについて、無理やり大規模な移民があったなんてことはさらさら考えていない。
その言語を含む文化がどのようにして残ったり、滅びたりしていくかという考察は極めて興味深い。ゲルマン民族の一派であるフランク族は、フランク王国を建国したというのに、自分たちのゲルマン系言語はさっさとすてて、今のフランス語に通じる言語を話すようになっている。同じゲルマン系民族であるサクソンは、ブリテン島に侵入・支配しても自分たちのゲルマン系言語を維持して現代の英語に通じる言語を話している。フランスでは、侵入した側が支配層であっても自らの文化のほうが優位でなければ言語であっても残らないからであると考察し、大量に支配層が入ったブリテンでは、サクソンの文化のほうが優位あるいは、大量に侵入した故であろうとする。これは、侵入した民族の人数にもよるということであろう。
では、大量のいわゆるケルト人たちの移民がないということが遺伝子解析でわかってきたブリテンで、ケルト系言語が話されていた事情はどう考察するのか?
それは、新石器時代のブリトン人たちが、優位であるとみとめた大陸側の文化を受容する過程で、少数の移民とともに徐々に受け入れられたのではないだろうかとするのである。そして、この過程に1000年の規模の時間がかったのではないかとする。

日本でも、弥生時代に大陸側からの大量の遺伝子の流入が認められている。しかし、私たちは中国大陸側の言語ではなく、独立系言語である日本語を話している。といういうことは、弥生時代に大量に移民してきた人々はサクソンのように言語を維持したのではなく、フランクのようにさっさと自らの言語を現地・日本の言葉に変えたということになる。こんなことも考えながらこの本を読んでいた。

いままで、現代ケルト文化の中心のようにいわれてきたアイルランドについては、ナショナルアイデンティティのためにケルトを利用しているのであって、実際はちがうとこれまたばっさりであり、かつては、フランスも自らのナショナルアイデンティティのために”ケルト”をもちだしていたという歴史の紹介なども非常に面白かった。

従来の現代ケルトは古代からの文化を脈々と伝える偉大な民族であるという議論を見直す面白い本と感じた。370ページを超える厚い本であるが、ケルトに関心のあるかたなら読んで損はあるまい。
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